※生徒持ち回り講義レポートです。今回は、浮間六太さんにお願いしました!(事務局)


  こんにちは。今回のトーク講座のまとめ執筆を仰せつかりました浮間六太です。文春野球学校全校生徒1200名(推定)を代表するこの重責、さぞや喧々囂々の末の決定だろうと思いきや、黒田さんによると「そういえば(まとめる人の指名を)忘れてたなと思って、前の日にメッセージを」とのこと。えーと、光栄っす。 


 さて。セ・リーグは巨人、パ・リーグは西武の優勝で幕を下ろした今年のプロ野球ペナントレース。一方、文春野球ではヤクルト、西武がそれぞれセ、パを制しました。パ・リーグはリアル野球と文春野球、共に西武が優勝したわけですが、なんとこれは史上初の出来事。今回のトーク講座の講師は、その快挙を成し遂げた二人の名将のうち文春野球のほうの監督代行、中島大輔さんです。




 文春野球でも「平井投げすぎ問題」や「若手投手キャッチボールおろそか問題」など、他のメディアが取り上げない、取り上げにくいテーマにズバズバと切り込み、最近では「野球消滅」という衝撃的なタイトルの著作を上梓された中島さん。その上、今回のトーク講座のテーマは「批評精神を少し持てば、文章に深みが出る」。さぞやピリピリとした怖い方なのでは、と想像していた人も少なくないはず。しかし実際の中島さんは、優しいルックスと丁寧で聞き取りやすい話し方の、とっても穏やかな方でした。


 このトーク講座の内容は、今回もガロンさんが神メモ(心から感謝)に要約してくれており、またお話の一部は中島さんの文春野球学校オリジナルコラムに詳細があります。こちらのレポートでは、ぼくが感じたことを自分なりに解釈や要約をし、加えて会場の雰囲気について触れてみたいと思います。




「冷静に、感情的になる」


 今回の講座の主題は、先に挙げた通り「批評精神を少し持てば、文章に深みが出る」。「批評精神」と聞くとマイナスのイメージを抱きがちですが、端的に言うならばそれは「原因の指摘と改善の具体的提案」のこと。中島さんの「明日の社会を少しでも良くしたい」というジャーナリストとしての目的を果たすためのアプローチ法です。批評するにあたって、責任を負う組織を攻撃することはあるが個人を責めても社会がよくなることには繋がらないので個人攻撃はしない、主観に寄らないよう事実に基づきフェアに書く、ということを心がけているそう。


 人間、年をとったり偉くなったりすると、なかなか悪い点を指摘してもらえないけれど、それを見て見ぬふりをせずに発言するのがフリーのジャーナリストの使命であり批評の位置づけとのことです。村瀬校長や竹田編集長も偉い人なので、きっと周りは委縮してしまって誰も文句なんか言えないんだろうなあ思いきや、竹田さんはこの日「会議が長い!」と若い女性に怒られたり、村瀬校長はハマスタで配布するベイスターズのCS用原稿が真っ赤に修正されて帰ってきたりと、文春野球学校のトップは揃いも揃って怒られるタイプの大人であることが判明。なんだか文春野球の沽券に関わりそうですが、これも事実なので見て見ぬふりをせずにしっかり伝えてまいります。


 批評という行為にはメリット、デメリットありますが、中島さんによると「冷静に天秤にかけて、持つか持たないかは各々の選択で。なんでもかんでも文句言っちゃうとよくないから、ケースバイケースで」とのこと。批評精神自体、「がっちり批評すると大変なので、ほんのちょっと入れてもらえばいい」とのことですが、この辺のさじ加減が実のところ難しいように思います。教わるだけでは身に付かない、実際に経験を積み重ねなければならない部分なのでしょう。「講座を聞くだけでレベルアップ!」なんて都合のいいものはこの世にないんですよね、残念ながら。「眠りながらテープを聞けば英語がペラペラに!」とかね。テープって。


 といって、みんなで小野コーチのところに押しかけても小野コーチが困っちゃうので、自重いただきますよう(そもそも無理)。


 ただ、自分の中に「批評精神を持つ」ということに関しては、思考や視野、姿勢の向上及び深化が図れるので、表現者としてはがんばって身に付けたいところです。


 中島さんの言葉で個人的に印象に残ったのは、「冷静に、感情的になる」です。ぼくもそうですが、自ら進んで文春野球学校にエントリーしたみなさんは、なにかしら「表現したい」という欲求があるはず。それがなんであれ、その欲求をただ感情的に文章に叩きつけるだけでは説得力は生まれない。人に納得してもらえる文章を書くため、丁寧な取材を行い、事実を積み重ね、冷静に文章を構築する。モチベーションはエモーショナルに、表現はロジカルに。「冷静に、感情的になる」という意味を、ぼくはそのように汲み取りました。


 座学の後は、班ごとに分かれてのディスカッション。テーマは「投げすぎはアリかナシか」。「こうするべきだという答えはない。それを分かった上で考えることに価値がある」という中島さんの考えの元、文春野球学校生徒一同は敢えて難しい課題にチャレンジしました。


 結論だけ言うと、7班中「アリ」3班、「ナシ」4班とナシ派がアリ派を僅差で上回りました。しかし、ここで重要なのは多数決ではなく「何をどう考えるか」ということ。十人十色ならぬ七班七色の議論を経て出た興味深い七つの答えは、各班代表者によってまとめられブログにアップされますので、詳細はそちらをご覧ください。


 ディスカッション後の総括を持って中島さんのトーク講座は終了。中島さんの文章は論理的かつ客観的で、講座の中では「冷静」というキーワードが何度も出てきました。しかし中島さんの姿勢の根源にあるのは「明日の社会を少しでも良くしたい」という気持ち。冷静沈着そうに見えて、実は中島さんは身の内に使命感が沸々とたぎる熱い男なのかもしれないな、と感じました。「熱男」って略さないように気をつけたいですね。




 これまでの文春野球全体を通しての感想としては、中島さんはもちろんのこと、全ての講師のみなさんが出し惜しみせず懇切丁寧に「表現のテクニック」について教えてくださいました。そして生徒のみなさんも、例えばディスカッションとあらば「もっと喋らせろ!」とタイムオーバーも辞さずに激論を交わし続けたり、ブログを続々とアップするなど、とても勉強熱心です。観戦や飲み会など部活動も活発ですが、そしてそれも大変楽しく魅力的ですが、まず「学び」という大前提がしっかり成立しているのが、正しく「学校」であるなあと感じられて素晴らしい。文春野球学校、おもしろいです。入学できてよかったなあ!


 ちなみに、今回のトーク講座から新しい事柄が2つ始まりました。1つは、イベントの中継。実施中のイベントの動画がリアルタイム配信されます。生で見逃した方も大丈夫。リアルタイム配信終了後には録画を観ることができます。今回、音声が少々難ありといった様子ですが、「コンピューターに強い」(黒田さん談)森田さんが解決に向け努力してくださることと思います。


 もう一つは、二期生の本格参加。これまでと比べ、ずいぶんな大所帯になりました。トーク講座開始前に竹田さんが懸念していた、一期生と二期生の血で血を洗う大抗争が勃発することもなくホッと一安心。トーク講座と同じ会場で行われた懇談会では、入学時期に関係なく、みなさんそこかしこで盛り上がっていました。結局、一期生も二期生も野球を見るのも書くのも語るのも大好きな人達ですからね。「趣味は?」「野球を見ることです」って、もうそこいら中でね。話が合うし話題も尽きません。




 懇談会の最中には、怪しいおじさんがマイクを持って闖入する場面も。しかし、みなさん嫌な顔一つせず優しく接してあげていました。文春野球学校は大人の学校だなあって思いました。おしまい!